Key words:QRPp,Transmitter,CW,Hamradio,Vacuum Tube,Valve,Automobile Radio,Space Charge Grid,Tetrode,12K5,12AC6,12J8,12DU7,12BA6,mile/watt

■このページの目的
感電しない電圧で動作する真空管式のQRPp送信機の開発と製作を紹介します.
■はじめに
いま、電子回路のブラックボックス化と対極にある真空管が注目されています.しかし、真空管回路は高電圧を扱うのが普通です.半導体世代が入門しにくい理由でしょう.真空管を低電圧で使うと低性能になるのですが、半導体なみの電圧なら各部に触れても感電しない送信機になります.低電圧で電力を取り出すのはとりわけ苦手なのですが、実際に600kmの交信が可能なだけのRFパワー(高周波電力)が得られました.これは限界ではなく、じっくり挑めば通信距離はさらに伸びることでしょう.それで、パワーはどれくらい出たのかと言えば30mW+αがやっとでした.しかしミニワットとはいえいわゆるワイヤレスマイクより、遥かに強力なので、もちろんライセンスが必要な立派な送信機です.
■ハードコアQRPerのために
このページは真空管を使った送信機を紹介していますが、ありきたりの製作ではありません.真空管にとって極めて低い電圧であるプレート電圧12Vで動作させます.デバイス(真空管)の検討、選定、特性評価から始め、試作機を完成させ、テストオンエアへと続きます.その上で、製作の再現性は十分にあるのか、回路定数を検討し真空管も交換して確認します.従って同等の製作で同様の成果が得られるでしょう.製作を主体にした記事ではありませんが、それほど複雑なものではありません.電子工作に多少のスキルがあれば初心者でも比較的容易に製作可能でしょう.そして、このページは真空管工作を愛し非常に少ないパワーこそ楽しいと感じるハードコアなQRPerのお方にもお贈りしたいと思います.
■低電圧用真空管:
1960年代の初め、トランジスタの性能が不十分だったころ、12Vで働くカーラジオ用の真空管が作られたことがあります.低周波電力増幅は誕生間もないトランジスタに譲りましたが、それ以外の、おもに高周波回路に使うための真空管でした.ヒータの加熱はもちろん、プレート電圧も12Vで使います.そのため、昇圧回路が不要になるという大きなメリットがあったので全トランジスタ化までの数年間でしたが、大いに使われました.そして、その時代の名残の真空管が今でも手に入ります.写真はそうした真空管で、左から12AD6(周波数変換用7極管)、12AC6(高周波・中間周波増幅用5極管)、12AE6A(検波用2極管及び低周波増幅用3極管)、12K5(低周波電力増幅用4極管)、そして一緒に使われた低周波電力増幅用のゲルマニウム・パワートランジスタ2N301Aです.
■ハイブリッド・カーラジオ
米国では色々なモデルがあったようですが、日本では自家用車も稀な時代なので、製品は限られていたようです.これは、現在の富士通テン、かつての神戸工業製のハイブリッド・カーラジオの一例です.やや新しいモデルらしく、低周波回路は既に完全半導体化されています.その他、松下通信工業製のハイブリッド・カーラジオも見たことがありました.カーラジオはアンテナ直下の強電界から、山間僻地まで移動する可能性があるので、高周波増幅を設け、AVC回路にも工夫の跡がみられます.プレート電圧12Vでは、gmが低下し十分なゲインが得られないので中間周波増幅も2段になっています.
■パワーを出すこと:
カーラジオは騒音の多い環境で聴取する関係で数100mWでは不足で、数W以上のパワーが必要です.しかし真空管を12Vで使ったのでは無理です.低周波パワーアンプ部分はトランジスタに任せるしかありません.逆に数W以上のパワーがでるアンプ部がトランジスタの発明で可能になったから12V用真空管のニーズが発生したのです.従って、もともとカーラジオ用真空管でWオーダーのパワーが出るものはありません.しかし、最初の頃はパワートランジスタのドライブに真空管を使っていました.トランジスタは高価なのでどうしても必要なところだけに使い、真空管で可能な部分はそれで済ませたのです.パワートランジスタのドライブには数10mW必要ですから、そうしたドライブ用に作られた真空管を使えば12V電源の球式QRPp送信機が可能かもしれないのです.
■空間電荷格子四極管:
カーラジオ用の12V管を扱うと必ず登場するのが、このいかめしい名前の真空管です.そう呼んで普通の四極管である「遮蔽格子四極管」と区別します.検討の結果、この送信機に空間電荷格子四極管は採用しなかったのですが、ざっと触れておくことにします.
低いプレート電圧では、カソードを飛び出た熱電子が滞留している空間電荷域を乗り越えられないので、十分なプレート電流が流れません.電力は電圧×電流ですから、低い電圧でパワーを出すためには電流で稼ぐしかありません.ところが普通の構造では十分なプレート電流は流れないのです.そこでカソード近傍に滞留する電子、すなわち「空間電荷」をカソード直後に置いたグリッド で吸い取り(中和し)、低いプレート電圧で大きなプレート電流が流れるように工夫したのが「空間電荷格子四極管」です.そのためのグリッドのことを「スペース・チャージ・グリッド」・・・日本語では「空間電荷格子」と呼びます.この仕組みを使ったカーラジオ用真空管では低周波アンプのドライバ用に作られた12K5が特に有名です.
■12K5と高周波特性:
しかし空間電荷格子四極管12K5は、等価的に見ると三極管と同じです.写真のようにEp-Ip特性を採ってみても三極管そのものです.普通の球のコントロールグリッドに相当する第2グリッド(*1)とプレート間にはスクリーン(遮蔽)グリッドはありません.従って電極間の静電容量Cpgが大きく、約12pFもあって高周波では中和が不可欠です.12Vの送信機には有望な球なのですが中和の面倒があります.できたら使いたくはありません.そこで、他の候補はないか探したら、同じ用途で純粋の(遮蔽格子)四極管が見つかります.そうした球が幾つか見つかりましたがパワーから見て有望そうなのは12J8と12DU7だろうと狙いをつけました.出力は12K5にやや劣るようですがCpgは約0.6pFと桁違いに小さいので高周波には使いやすいはずです.但し、いずれも低周波用ですから高周波に向くか否かは現物の構造的を見てから考えましょう.
*1:これは常識の範疇ですが、グリッドはカソードに近いほうからプレートに向かって第1,第2、第3グリッド・・・と呼びます。そのほか、普通の5極管では第1グリッドを「コントロール・グリッド(制御格子)」、第2グリッドを「スクリーン・グリッド(遮蔽格子)」、第3グリッドを「サプレッサ・グリッド(抑制格子)」と呼ぶことも多いです.なお12K5の場合は第2グリッドが「コントロール・グリッド」に相当します.第1グリッドは、もちろん・・・「スペース・チャージ・グリッド」ですね.
■水晶発振回路に使う真空管は?:
終段管の目星をつけたところで、その前段の水晶発振の検討をしておきます.実際、プレート電圧Ep=12Vでも水晶発振は楽々可能です.発振管には12AC6と言う、カーラジオ用の12V管を使いました.写真のように各社が製造していたようです.高周波増幅用12V管はたくさんの種類があって、他にも12AF6、12BL6、12CX6、12CY6、12EA6、12EZ6などでも良いでしょう.検波用二極管が複合された球を除けば、どれもピン接続は同じです.互換性は十分にあるはずです.
■12AC6のEp-Ip特性:
低い電圧用に作られた真空管の特性には前から興味があったので測定してみました.セオリ−通り、さすがにプレート電流は流れにくいようです.グリッド電圧Eg=0Vのときでも、プレート電流Ipは1.5mA少々しか流れないのです.ただ、特性をみると相互コンダクタンスはそれなりにあるので、増幅や発振が可能なことは十分わかります.感覚的には少々電流の流れにくいFETのような特性と思えば良いでしょうか.Hi
■普通の球の低電圧特性は?:
では、カーラジオ用ではなく、トランスレス式の五球スーパに使われていた12BA6や12BD6はどうなのでしょう?
■12BA6のEp-Ip特性:
12AC6と同じ条件で試してみましたが、類似の特性です.即ち、これらの球でも支障なく使えそうなことがわかりました.他の高周波用五極管も試してみたのですが、大同小異の特性でした.この後の、水晶発振の実験でも差し換えてみたのですが、どれでも大きな差はありません.出力に電力を要しない用途なら、一般的な(高電圧用の)五極管が十分使えることがわかります.手持ちがあれば活用してください.
■12AU7のEp-Ip特性:
ついでに純三極管12AU7の低電圧特性も測定しておきました.このように、高電圧のときより電流は少ないですが、奇麗な三極管特性を示します.低い電圧でも増幅や発振に使えるでしょう.
■発振回路の検討:
発振回路には様々なものがあります.これから作るのは2ステージの送信機ですから、終段の影響が少ない発振回路が有利です.五極管を使い、ECO形式にすると良いでしょう.ここでは(D)のグリッド・プレート型という発振回路を採用しました.キーイングしてみて確実に発振し、周波数変動も実用範囲にあることを確認しました.次段の影響は出にくい回路ですが、プレート同調回路の調整によって僅かに周波数変動が見られました.また、キーイングではプレート同調の合わせ方で多少周波数変動(チャープ)が見られるようです.しかし、モニタしながら加減しておけばまったく支障はないようでした.
■発振回路の実験:
とりあえず、発振管には12AC6を使うことを想定し、実際に回路を組立ててみることにします.簡単な回路ですから部品が集まれば1時間も掛かりません.なるべく簡単に実験できるよう、プリント基板上に半導体回路と同じように組立てることにします.
■出来上がった水晶発振回路:
配線の中継には基板小片を瞬間接着剤で止めた『ランド』を使います.真空管ソケットは、予めアースする端子を相互にメッキ線で結んでおき、その後基板にハンダ付けして固定します.回路電圧もトランジスタ回路なみですから心配は要りません.この構造はバイパス・コンデンサを近傍にアースできるので高周波的に安定して動作します.水晶発振子はJAのQRPerが多くオンエアする7003KHzです.だいぶ前に有志が纏まってアルト電子に特注したもので、アクティビティの高い良い水晶でした.その節はJL1KRA中島さんにお世話になりました.発振周波数は写真のトリマコンデンサで3KHzくらい加減できます.上の回路図ではトリマコンデンサは水晶に直列になっています.その方が良い場合もありますが、この水晶の場合は、やや高めの周波数で発振したので、(C)図のようにトリマコンデンサを水晶発振子に並列にしています.即ち、(D)の回路を使いますが、水晶振動子は直接アースしトリマコンデンサは水晶振動子と並列に入れます.この試作回路を使って発振起動特性、負荷インピーダンスによる影響、真空管を交換・変更したときの違いなど、十分な確認を行ないました.
■終段管の検討:
真空管をプレート電圧12Vで使いパワーを出すことの難しさは、実際にやったことがあれば実感されている筈です.たとえば、上の12AC6ではEp=12Vのとき、Ip=1.5mA程度でした.プレート入力は18mWに過ぎません.発振回路ですから、2〜3mWくら取り出すのがせいぜいでしょう.いくらQRPとは言っても、あまりにもLow Power過ぎます.従って、電力増幅が必要なのですが、適当な真空管を見付けるのが大変でした.その中で特に良さそうなものが、写真の12J8と12DU7です.いずれも、カーラジオ用でゲルマニウム・トランジスタを使った低周波パワーアンプをドライブするための真空管です.四極管部分のピン配置はまったく同じなので相互に差し換えが可能です.どちらも検波用の双二極管が複合された9ピンのmt管です.電極構造は相似に見えますが、高周波的には12J8の方が有利なようです.
■12J8
入手した3つのブランドの12J8を並べてみました.構造はどれも殆ど同じです.後ほど実際に動作させて比較しましたが、ブランドによる違いはありませんでした.但し、低電圧という厳しい条件で使う関係で同一ブランド内でもバラツキはあるようでした.
■12J8のEp-Ip特性:
12J8の四極部はどのような特性なのか、Ep-Ip特性をとってみました.流石にパワーが出るように工夫された四極管です.Ep=12Vで『Ip=22mAも』流れるではありませんか! これなら数10mWのパワーが出せそうです. 12K5と違い当然ですが四極管の特性を示すことがわかります.
■12DU7
こちらが、12DU7です.双二極管部は、12J8のように四極部と独立しておらず、カソードを共有した構造になっています.そのために、ヒータ電流が節約されています.四極管部分のプレート寸法や形状・構造を比較すると12J8と殆ど同一に見えます.二極管部分の構造の違いだけなのかも知れません.
■12J8と12DU7の構造比較:
しかし詳細な比較結果から結論を言えば、高周波には12J8の方が有利なようです.どちらも、いまの目的用途には不要な二極管が複合されています.構造を見ると12J8の二極部は完全に独立していて四極管部とは無関係です.肝心の四極管部の電極は短い管内リード線でストレートに引き出されています.一方、12DU7は二極管部を四極管部の下部で共通のカソードに複合した構造です.その二極管部が干渉するので四極管部のカソードを写真のように管頂部から引き出しています.
その結果カソードの引き出しリード線が管内を縦断していてだいぶ長くなっています.長い引き出しリード線はインダクタンスとして作用します.高周波ではカソード回路にインダクタンスが入ると負帰還作用のためにゲインが低下してしまいます.従って12DU7の内部構造は高周波では不利でしょう.低周波ではどちらも大差ないとしても、高周波での性能は現物の構造からこのように判断できました.
実際の送信機に使った比較では、周波数の低い7MHzなら顕著な差はないようでした.しかしHF帯ハイバンドや50MHzで使うとすれば12J8の方が明らかに有利になると思います.先々の実験を考えるなら12J8を手に入れるのが良さそうです.なお、12DU7にも多少のメリットがあって、約75mAではありますがヒータ電流が少なくて済みます.
■12DU7のEp-Ip特性:
12DU7の四極部のEp-Ip特性をとってみました.12J8と同じように、Ep=12Vで『Ip=26mAも』流れてくれます.12J8よりも多く流れますが、管種の違いによるものかバラツキなのかはわかりませんでした.しかしたとえ数mAでもIpが良く流れるのは有利なようで、10%くらい多くパワーが出ました.低い周波数では管内リードが少し長くてもまだ影響は少ないようです.
■終段タンク回路の検討:
いよいよ終段出力回路の検討です.真空管式送信機の終段タンク回路には幾つかの形式があります.図のように、大きく分けるとリンク形式とπ型にわかれます.市販の送信機やトランシーバでは、おしなべてπ型が使われていましたが、これはマルチバンド化に向いているためです.モノバンドならリンク形式でも十分です.
特に、トロイダルコアを使えば密結合トランスになるので、インピーダンス比は巻き数の二乗に比例するので設計は容易です.負荷Qの調整には同調回路のL/C比とタップダウンなどで旨くできます.ここでは、まず始めに最大パワーが取り出せる終段管の最適負荷インピーダンスを求めたのち、それに適合するようにリンク(2次)コイルの巻き数を決めました.さすがにトロイダルコアを使った閉磁回路なので、インピーダンス比は巻き数比の計算値によく合うようです.Lossを感じずに50Ωにインピーダンス変換できました.また、QLをやや大きめにとったので、後述するようにスプリアス特性も良好でした.
■送信機全回路:
スタンバイ、アンテナ切り替え、キーイングなどを加えて完成したのが図の回路です.キーイングは水晶発振と終段のカソードで行います.キーイングモニタは用意しませんが、QRPp機ですから送信時も受信を活かしてモニタすればよいでしょう.スタンバイはアンテナのみ切り替えます.固定周波数では寂しいのでVXO化したいところですが、2ステージでは難しく、必ず3ステージ以上にすべきです.VXOは発振条件が悪くなる関係で、発振管は何でも良いと言うわけには行かないので、なるべくgmの高い球を使い実験的に定数を決める必要があります.本格的に使うのなら、外付けの半導体式VFO/VXOを使うのも良いと思います.少々邪道な気もしますがDDSなども良いかもしれません. もちろん、水晶片を数個用意して差し替えでQSYしても良いでしょう.
■使用部品と部品表:
主要な使用部品を説明します.部品調達の参考にして下さい.
なお真空管を頒布します.詳細はこの記事の末尾にあります.
(1) 真空管:V1
12AC6を使いました.ヒータ電圧が12Vの五極管なら多くの代用品があります.例えばカーラジオ用12V管としては12AF6、12BL6、12CX6、12CY6、12EA6、12EZ6があるほか、普通のトランスレス用として12BA6、12BD6、12AU6、12SK7、12SJ7などでも良いです.どれを使っても大差はありません.
(2) 真空管:V2
12J8もしくは12DU7を使います.そのほか幾つか使えそうな候補がありますが未検討です.使えそうな候補を示しておきます.12DK7、12EM6などそうですが、優劣は各自で確認してください.カタログ特性を見た範囲では期待薄なように感じましたが・・. (注)空間電荷格子四極管の12K5、12AL8、12DL8などを試すには終段回路の大幅な変更が必要です.推奨しません.
(3) コイル(左図下段の別表も参照)
チョークコイルを含めて全部で4つのコイルがあります.
L1:単なる高周波チョークコイルです.同じ470μHでも小型のものの中には直流抵抗が大きいものがあります.テスタで計った直流抵抗が10Ω以下のものを使って下さい.
L2:φ5.5mmのコア入りのボビンに巻いて作りました.FCZコイル10S9も使えます.
L3:トロイダルコア、T-50-#2に巻きます.同調側:29回、リンク側:14回.巻方の詳細は写真を見て下さい.
L4:ローパスフィルタに使うコイルです.空芯コイルでも良いですが、トロイダルコアに巻く方が小型です.T-68-#2に13回巻きました.
(4) トリマ・コンデンサ(半固定コンデンサ):C7、C16
C7は発振周波数の微調整用です.約3KHzくらいの調整範囲があります.C16は終段タンク回路の同調用です.いずれもトランジスタ回路につかう普通のトリマ・コンデンサで十分です.セラミック・トリマのほか、フィルム型、マイカ型などがあります.大型になりますが、エアバリコンやエアトリマでも良いでしょう.
(5) コンデンサ:
高周波回路に適したコンデンサを使って下さい.0.01μFより大きな、バイパスコンデンサは、バイパス用の(普通の)セラミック・コンデンサを使います.発振回路、終段回路、ローパスフィルタに使うコンデンサは、マイカコンデンサ、もしくは温度補償系のセラミック・コンデンサを使います.
(6) 抵抗器:
一般的なトランジスタ回路用です.カーボン型または金属皮膜型を使います.いずれも1/4W型で十分です.
(7) リレー:
2回路トランスファー接点(C接点とも言う)を使います.コイルの定格はDC12Vのものを使います.HF帯ですから、小型のものなら特に高周波用でなくても支障ありません.ダイオード・スイッチと言う手もありますが、リレーも消費電流はさして違わないので安直で良いと思います.
(8) スイッチ:
電源スイッチとスタンバイ・スイッチがあります.トグル・スイッチなどが良いでしょう.
(9) 同軸コネクタ:
アンテナへ行く方にM型、受信機へ行く方はBNC型を使うようにしています.お好みでどうぞ.
■製作
スタンバイ・リレーなどを除き、送信部のあらかたが完成しました.この状態でどの程度のパワーが出るかなどざっと評価をしておきます.この送信機を作ってみようと思うのは、「オーソドックス」を卒業されたベテランHAMが多いのかも知れません.従って、構造や配線など各自、自分流にやっていただければ良いと思います.とかく『真空管工作=アルミシャシで製作』の感が強いのですが、ここでは実験の都合で半導体回路の試作と同じように生基板に立体配線で作りました.100×55mmの短冊形基板をブロックごとのユニットに作り、結合して行きます.これを実用的に使うこともでき、そのときは操作パネルを設けてスイッチやメータを取付けると使い易いでしょう. 周波数は7MHzと低く高周波の常識を理解して作れば失敗もないでしょう.回路電圧は低いので感電の心配はありませんが、真空管はそこそこ熱くなりますから火傷には注意が必要です.
■送信波形
負荷に50Ωのダミーロードを付け、連続キャリヤを出して波形観測しました.約3.5Vppあれば、出力電力Po=30mWです.このようにきれいな正弦波になっていますが、もちろん何がしかの高調波は含まれています.どの程度かは、スペクトル観測で確認します.
■送信スペクトル
QRPpの30mWとは言え、あまり高調波が多くてはまずいでしょう.水晶発振も、終段電力増幅も狭帯域増幅回路ですから、高調波は少なめです.7003KHzの二次高調波14006KHzは写真ように、基本波の-35dBでした.元々がQRPpですから、電波法上も支障ないレベルです.しかし、自作送信機の保証認定をもらうためには低域濾波器LPFの付加は必須のようになっています.追加しておくことにしましょう.
■ローパスフィルタとスタンバイリレー
アンテナ切換のリレーを付加する際に、簡単な低域濾波器LPFも一緒に追加します.LPFのコイルには写真左側にある空芯自立型でも良いです.ここではコンパクトに組むために赤いトロイダルコアT-68-#2に巻いたものを使うことにしました.リレーは、シールドされたタイプを使いましたが、一般的なもので十分です.リレーコイルにはOFFの瞬間に発生する逆起電力を抑えるためのダイオードが必須です.
(参考)空芯自立型コイルの諸元:巻線φ1.0mm、巻数8.5回、巻径(内径)19mm、巻幅14mm、L=1.18μH
■リレーとLPF周り
写真のように、基板を追加して組み付けました.多少余裕があり過ぎますが、リレー端子の引出しなど容易です.
■確認と調整:(写真は輝く終段管12J8です)
(1) 調整につかう道具:次の道具を用意します.
DC12V(1A程度)のDC電源.テスタ.7MHzが受信できる受信機(トランシーバ)、電鍵、クリップ付き電線、調整用ドライバなど.
(2) 調整方法
製作を主体にした記事ではないのでざっと書きます.12.6V電源を加えて発振回路から確認します.コアの位置が相当ずれていても発振はするはずです.オシロスコープ、RFプローブ付き電圧計、受信機などで発振を確認します.発振が確認できたら、発振段のプレート側・L2を調整して強勢になるようとりあえずラフに調整しておきます.
続いて、終段回路の調整です.出力端子に50Ωの擬似負荷抵抗(ダミーロード)を付けます.100Ω1/2Wの抵抗器を2本パラにして作ったものでも十分です.送信して50Ω両端のRF電圧が最大になるようにタンク回路のトリマ・コンデンサC16を調整します.50Ω両端をオシロスコープで測定し、正弦波の電圧が3.46Vppあれば出力電力:Po=30mWです.タンク回路形式であり、LPFも付けてあるので高調波は少ないのですがスプリアスの確認をしておけば安心です.試作品のスペクトルは次項の通りです. 仕上げに、キーイングしながら受信機でモニタして、発振段のプレートコイル・L2を少し加減してください.調整が悪いと、発振の起動性が悪くなり極端な場合はドットが抜けることがあります.またチャープが強く現れることもあります.発振の強さとの兼ね合いで、ちょうど良いところがあります.受信機でモニタして耳で聞きながらやれば簡単に良い所が見つかります.
■送信スペクトル(LPF追加後)
LPF追加の効果があって、二次高調波は基本波に対して約-55dBと、20dB改善しています.QRPpな送信機ですから、これなら文句なしでしょう.フィルタの通過Lossはほとんど感じられませんでした.
■送信パワーは?
気になるパワーはどのくらいになったでしょうか? LPFを付加して完成状態になったところでパワーを測定しました.写真のパワー計は低電力の測定用に作ってある自作品です.標準信号発生器SSGを使って校正してあります.パワー計単体の測定範囲を越えてしまう関係で、外付けで10dBの減衰器を付けています.従って、メータの読みからパワーは約15.8dBm/38mWであることがわかります.写真の状態は、終段管に12DU7を使いEp=13.8Vです.プレート電圧Ep=12.6Vでは、12J8で30mW(14.8dBm)、12DU7で33mW(15.2dBm)でした.もう少しパワーが欲しいところですが、単管のファイナルではどうやらこのあたりが限界のようです.実験的にEp=24Vのテストもしましたが諸条件を最適化していない関係で、100mWは得られませんでした.12Vより高い電圧を掛ければパワーが出るのは当り前で、それならEp=150Vにでもして数Wの送信機にするべきです.ここは、カーバッテリーの電圧範囲でやるのが本筋だと思います.Hi Hi
■これで完成!
これで完成しました.バラックの延長のような実験機の状態ですが、部品や真空管ソケットの固定方法を工夫してあるので、結構しっかりしています.本格的に使うのでしたら、プリント基板を使った簡単なパネルを付けるか、丸ごとケースに収納しても良いでしょう.真空管が発熱しますので、密閉するのは良くありません.通風のあるケースに入れると良いでしょう.あとはお好みでどうぞ.
■On th Air !
真空管式の受信機がお似合いでしょうか? 八重洲無線のFRDX-400を組合せてみました.もちろん、最近の半導体機でも良く、QRPpですので、送信時も受信をミュートする必要はありません.オンエアモニタを兼ねてサイドトーンとして使います.このFRDX-400は、JO1LZX河内さんにお譲り頂いた美機です.どうも有難う御座いました.
30mWといえば、かなりのQRPpですから、オンエアの成績が気になります.2008年4月現在、最長距離は愛媛県今治市のJA5DIM林OMとの約600Kmです.従って20,000km/Wと言うところです.まだ出来上がったばかりなので、アクティブにオンエアすれば距離はさらに伸びるでしょう.過去のQRP運用の経験から言えば、コンディションを掴み気長にやればAJDくらい容易に可能な筈です.実際、数mWで海外局と交信する人もありますので、WACだってけして夢ではないのかもしれません.
●エピローグ:(写真は輝く12DU7)
プレート電圧12Vのカーラジオ用真空管が近代になって改めて紹介されたのは、電波実験社の今はなき「モービルハム誌」だったと思います.12AF6と言う五極管を使った再生検波回路+LM386のオートダイン受信機でした.非常に低いプレート電圧で使えることを示したインパクトある記事でした.
インターネット時代になり個人輸入が容易になったので、近年このシリーズの球を使ってラジオや受信機を作る人が現れました. ところが、ワイヤレスマイク程度ならいざ知らず、HAMが使うような『送信機』の例は見ませんでした.QRPerの集まりでも、「送信機はできないのか?」と言う声も聞きました.もの珍しさもあって多くの自作HAMが真空管に興味をもっています.だんだん値段は上がっていますが、入手できないほどでもありません.遊びに使えるなら手を出してみたい人も多いでしょう.
HAMの場合、受信するだけでは満足できません.真空管式送信機も作って交信してみたいと思うはずです.しかし、いまさら数100Vを扱う製作は感電が怖いし高耐圧の部品も持ち合わせていないでしょう.そうした背景からプレート電圧12Vで送信機は・・・と言う問いになるのでしょう.
きっぱり言うと、十分な性能を発揮させようと思うなら真空管は高電圧で使うべきです.このページのように低電圧で真空管を使うのは間違いなく邪道です.これは送信機に限らず、オーディオアンプであっても同じです.当り前ですが、そのデバイスに適した条件(電圧や電流)で使ってこそ、良い性能が得られるものです.昔っから適材適所と言いますね.
そうは言っても、低電圧で使いたい人もあるでしょう.不利は承知の上でしたら大いに試したら良いと思います.このページの製作例に捕らわれると、短期間で真空管(12J8など)が枯渇する可能性もあります. やがてオークションに登場すれば価格は高騰するかも知れません. しかし他にも手は色々あるはずです.それを見つけて、貴方だけのOnly Oneでオンエアするのはとても楽しいでしょう.様々に実験していただけることを期待しています.
他の周波数での可能性ですが、HF帯の低い方は同じ回路構成で良いでしょう.ハイバンド〜50MHzでは、12J8であってもCpgが大きいので中和をとる必要があります.12J8は元々が低周波用であり高周波特性は考えられていないからです.それをカバーする使い方をすればHF帯〜50MHzの送信機なら十分可能性があると思います.
最後に、正直言って12.6Vでパワーを出すのは大変です.少しでも電圧を上げれば容易なのは当たり前ですから、24Vで100mWも出たなどと自慢するのは、もちろんフェアなことではありませんよ.Hi Hi
(注意:オークションの出品に本ページを引用・参照するときには必ず連絡してください!)
■真空管の頒布ご案内:
このページでご紹介した12V管は低性能なので一般にはニーズの少ない真空管です.比較的大量に作られた米国では当時の補修用がたくさん余っているようです.残念ながら1960年代当時の状況を考えると国産品は殆どないうえストックも稀なはずです.従って、米国から輸入することになるのですが、少量の輸入では送料が馬鹿にならず、最低3,000円くらいかかります.テストを兼ねて購入した手持ちが多少ありますので、ご希望されるお方に頒布したいと思います.(初めてのお方でも可です)
●頒布は:12AC6(または同等に使える球)と12J8(または12DU7)の2本セットです.
なお、12J8の方をご希望ならお書き下さい.可能な範囲で対応します.
●頒布価格:入手費用、送料など諸経費を考慮し端数のない\1,000-(送料込み・2本で)にします.
例によって、等価物品との物々交換も歓迎致します
●申込は:まずはお名前(実名)、コールサインを明記したメールをお送り下さい.
●ご注意:これは商売ではありません.余暇でやることなので返事が遅いなど少々サービスが悪いのはご勘弁を.
12J8/12DU7にはパワーが少ないものがあるようなので、テストして約30mW出るのを送ります.
但し、お書きいただいても希望ブランド通りの真空管は送れないことがあります.
手持ちの球の都合が付くうちは頒布のご要望に応じます.
たくさんのお方に作って頂けたら嬉しいと思います.
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