Key words:Cerladder,Ceramic Resonator,Filter,CSB455E,Ladder Filter,SSB,CW,455KHz,Ceralock
■このページの目的
世羅多フィルタとはセラミック振動子を使って自作したラダーフィルタのことです.その第1回目として、セラミック共振子の特性について調べてみます.フィルタ用として要求される特性に対して適性を持っているのでしょうか.
■関連のページ
世羅多フィルタの設計・製作・応用編には、以下のページがあります.
- What's the "Cerladder Filter" ? (Part.1):セラミック振動子研究編(いま見ているページ)
- What's the "Cerladder Filter" ? (Part.2):世羅多フィルタの設計・製作編
- What's the "Cerladder Filter" ? (Part.3):世羅多フィルタの活用編
- "Cerladder Filter Plus One (1)":世羅多フィルタ・プラスワン(1)
- "Cerladder Filter Plus One (2)":世羅多フィルタ・プラスワン(2)/Sorry,Not Yet.
■セラミック共振子
セラミック共振子(或いは振動子)とは何でしょうか.これは、コイルLやコンデンサCを使った共振回路ではなく、セラミック板の機械的な共鳴現象を使った振動子です.現代の電子機器は、その多くがデジタル回路で構成されています.デジタル回路もランダムロジックで構成された機器はなく、マイクロプロセッサを含むのが普通です.内部は、プログラムによる逐次処理が行われ、その処理の刻みを決めるのがクロックです.クロックとは発振器であり、要求される精度によって、RC発振器のようなラフな物から、水晶発振器まで様々です.セラミック共振子は、水晶ほどの精度は求めないがRC発振では満足できない用途のために開発されました.何と言ってもそのウリは低価格にあります.水晶とは違い、セラミックの焼物であり、量産効果によって非常に低価格で供給されています.しかし、数個の特注など受けてもらえませんから水晶のように任意の周波数の物を得ることはできません。我々は既製品をただ消費するだけの立場にあります.それでも新品ジャンクはたいへん手軽に入手できますから、手作りHAMの本領を発揮して何とか活用たいものです.
■ラダーフィルタ
すこし自作を始めた方なら、ラダー型フィルタをご存知でしょう.短波帯無線機の自作をお考えなら、既に何回も目にしていると思います。フィルタの選択は製作の重要なポイントなのですが、市販品は限られたています.特注も可能ですが高価で時間も掛かります.アマチュアにも自作可能で急峻なフィルタと言えばラダー型フィルタが定番で、もうすっかりお馴染になっています。
ラダー型フィルタと言えば、ジャンクの水晶を集めて作るのが一般的です.では、セラミック振動子ではダメなのでしょうか.発振回路では水晶振動子と同じように扱われますし、説明を見ても同じように感じます.たしかに水晶に比べて周波数精度がやや悪い、温度係数が大きいと言う欠点があります.しかし、周波数精度は選別で対応し、またフィルタですから温度係数もそれほど問題にはならないでしょう.ぜひとも安価なセラミック振動子を活用してみたいものです.
旧ホームページ時代に、世羅多フィルタと言うページがありました.それまで、セラミック振動子で狭帯域のフィルタの製作に成功したという話を聞いたことが無かったので作ったページでした.初めてセラミック振動子で作った実用的なフィルタを見たた方も多かったでしょう.『世羅多フィルタ』はセラミック振動子を使ったラダー型フィルタの愛称で、私の造語です.インターネットのお陰で、チョットだけ認知されてきたように思っています.自作結果をホームページでお書きいただけるのなら、ニッポン発の話題としてCerladder Filterとしてご紹介いただけたならFBです.
■最初はセラミック振動子の特性から
旧・ページは簡単な説明でまとめていました.新ページの執筆にあたっては、もう少し掘り下げて、また応用についても詳しく書きたいと思っています.単に珍しい物のご紹介だったのが、今では実用段階になりつつあります.自分の好みに合ったフィルタが作れますからもっと活用して欲しいものです.まずは初回としてセラミック振動子の電気的特性を見てゆきます.
写真は、市販されているセラミックフィルタの例です.量産機器用に安価に供給されています.しかし、ほとんどがラジオやステレオと言った家電か、移動体通信向けの特性です.もし、これらの既製品で間に合うのなら、自作する意味はあまり無いでしょう.では、既製品では何が満足できないのでしょう.それは、通過帯域幅にあります.狭い帯域幅のものは約2.4KHzのCFJ-455K(村田製作所)が唯一です.ケンウッド、八重洲、アイコムなど市販SSBトランシーバに良く使われています.しかし、これを除けば6〜8KHz幅のAMラジオ用か、移動体通信用の20KHz幅のものばかりです.また、CFJ-455Kよりもう少し狭い、或いは広いものはありません.ましてCWに向いた通過帯域幅1KHz以下もありません.市販セラミックフィルタも当然セラミック振動子を使っているはずです.しかし狭帯域フィルタはニーズが少ないうえ、振動子のバラツキから、量産は難しいでしょう.水晶フィルタよりも高価では意味がありません.従って今後も登場する期待は持てません.こうした我々のニーズ満たせるのならラダーフィルタの自作は大いに価値があることになります.
500個入って\1,990-で売っている455KHzのセラミック振動子です.後編でご紹介しますが、このセラミック振動子を5個も使えば混雑した7MHzでも使い物になるCW用フィルタが作れます.通過帯域3KHzと言うファイファイ(?)受信用SSBフィルタも可能です.発振に使ったのではとても消化しきれませんが、選別してフィルタを作るにはたいへん有利です.ニーズに合ったフィルタが何個か製作できればすぐに元が取れてしまいます.驚くべき安価ですが、最近の面実装には合わなくなったので新品ジャンクとして放出されたのでしょう.
このセラミック振動子は寝かせて付けるように足の曲げ加工がしてあります.それを除けば一般の物と同じ仕様のようです.水色の物はラダーフィルタの構成に使った積層セラコンです.本来、High-Qなコンデンサが良いのですが、セラミック振動子自身のQがあまり高くないので良質なセラコンを使えば十分なようでした.具体例は後編で説明します.
実践を旨としたサイトなので、難しい説明はしないことにしていますが、振動子について最低限の知識があれば応用の範囲が広がります.また、無駄な努力を避けることができます.
ラダーフィルタに使う振動子は、直列共振周波数fsと並列共振周波数fpの周波数差Δf=fp-fsが重要です.フィルタの通過帯域幅を、Δfの1/10〜1/3程度に設計するのが良いからです,これは、振動子の周波数選別、終端インピーダンスの範囲などの経験からに見て作りやすい範囲と考えられるからです.このΔfは振動子の等価的インダクタンスLmやCm、そして電極間容量に相当するCsに依存します.水晶の場合、Lmが大きく、Cmはたいへん小さい値です.例として2MHzの水晶では、Lm=0.72H、Cm=0.009pF、Cs=3.0pFであり、Δf=3.0KHzくらいです.従って、この水晶ではラダーフィルタとして適当な通過帯域幅は約0.3〜1.0KHzであり、CWは良いがSSB用は難しいことがわかります.発振周波数の精度、安定度の為には、Δfが狭いことは重要で、普通の水晶振動子はそのような観点から製作されています.一方、セラミック振動子ではLmがずっと小さく、Cmが大きくなります.Csも水晶よりずっと大きいのですが、結果としてΔfはずっと大きくなります.2MHzでは、Lm=1.2mH、Cm=5.2pF、Cs=40pFというような値ですから、Δf=120KHzにもなります.通過帯域幅12KHz〜40KHzが適当な範囲ですから、SSB用にもAM用にも広すぎます.セラミック振動子ではもっと低い周波数でないと狭帯域のフィルタは難しいのです.このように、等価回路の数字は重要なのですが、振動子の設計をするのではありませんから、より直接的には、Δfを実測すれば良いと言えます.
■測定について
ラダー型フィルタの製作にはΔfが重要なことはわかりました.では、それを知るにはどうしたら良いでしょう.専門的には、ネットワーク・アナライザと言う測定器を使います.トラッキング・ジェネレータとスペクトル・アナライザの組合せでも良いでしょう.しかし、それがないとわからないのでは安い部品の活用が目的なのですから本末転倒です.もちろんそうした機器をお持ちなら、この機会に是非ご活用ください.FBな測定器も持っているだけでは何の自慢にもなりませんので.
同じメーカー、同じ目的の振動子(水晶、セラミック)であれば、Δfのバラツキはそれほど大きくありません.ですから数個も測定すれば設計に使えるデータが得られます.測定には発振器とオシロスコープ(または高感度高周波電圧計)を使い、図のようにすれば良いでしょう.発振器は自励発振器でも良いのですが、お薦めは秋月電子通商で売っているDDS発振器です.(但し多少の改造が望ましい)また、そんなに高い周波数の振動子は無いですから、オシロスコープは20MHzくらいの帯域幅があれば十分です.これらの測定器は、ラダー型フィルタの製作以外にも、アマチュア無線の自作には様々に役立つものです.持っていてけして損はありません.最近は新品も安価なうえ、中古計測器もたくさん出回っていますから、すでにお持ちの方も多いでしょう.発振器とオシロスコープでは以下の写真のようなカーブを直接得ることは出来ませんが、要はピーク(山)の周波数と、ディップ(谷)の周波数の差がわかれば良いのです.
参考:セラロックほか水晶振動子など種々の周波数の振動子について上記の簡易的方法で評価してみました.その結果、振動子(周波数)によってはDDSオシレータとオシロスコープによる方法でも十分計測可能でしたが、難しい場合もあることがわかりました.そのため、セラミック振動子、水晶振動子の評価に十分に使える発振器とレベル計のセットを製作してみました.これは安価に製作可能で、振動子の評価のみでなく、フィルタの特性確認のほか、自作機器の製作や無線機のメンテナンスなど多用途に使えるものです.将来サイトでの公開も計画していますが、CQ Hamradio誌・2006年4月号(3月19日発売予定)への掲載が先行する予定です.記事では回路及び製作の概要が紹介されるはずです.また、各種振動子の評価には簡単な測定治具があったほうが効率的です.治具については同じくCQ Hamradio誌・2006年2月号(1月19日・既発売)でご案内しています.合わせてご参考下さい.(Jan. 22nd 2006)
まず最初は比較対象として水晶振動子の特性を見ます.ポピュラーなHC-49/U型フォルダに入った2MHzの水晶です.写真の物もごく普通に市販されている水晶です.
横軸は全体で10KHzです.2点マーカーで直列共振周波数fsと並列共振周波数fpの差を示しています.尖った山がfsで、谷底がfpです.水晶ではΔf=fp-fsが狭く、この水晶の場合2.31KHzしかありません.従ってあまり広い帯域幅のフィルタは作れません.
セラミック振動子の例です.青いケースに入った秋葉原で見つけたジャンクです.CSB280Dと言う、周波数が280KHzの振動子です.低い周波数のセラロックも何かの役に立つかと思い購入しました.オレンジ色のものは大きさ比較のために置いた455KHzの物です.周波数が低くなるとご覧のように形状も大きくなることがわかります.
280KHzでフィルタを作ることは無いかも知れませんが、このような特性です.横軸のひと目盛りは5KHzで、横軸全体では50KHzです.Δfは約9KHzとなります.CW用、SSB用のフィルタが十分作りえる筈です.数100KHzの水晶では、1KHzもないくらいですから、セラミック振動子のΔfはずいぶん大きいことがわかります.
これから使おうとする455KHz付近のセラミック振動子です.左からCSB455E、CSB472、そして右がBFU455と言うものです.BFU455は扱いとしてはフィルタですが、特性的に見ると他のセラミック振動子と同じようなものです.このほか、480KHz、500KHzなど種々の物をジャンクで見かけます.この周波数付近では、輪郭振動と言うモードで振動しているのだそうです.
CSB455Eの特性です.この振動子で『世羅多フィルタ』を作ることになるので詳しく見ましょう.マーカーは、直列共振周波数fsに置いてあります.この直列共振周波数fsがフィルタの通過帯域下端になります.通過帯域幅を色々変えても下端の周波数はほとんど変化しません.これは良く覚えておきましょう.フィルタを作るにあたっては振動子の直列共振周波数fsをしらべ、同じものを必要な数だけそろえます.このCSB455Eはfs=443KHz付近に分布していました.この振動子でSSB用フィルタを作るとすれば、中心周波数fcはこの周波数fsの約1.5KH上の444.5KHz付近になるでしょう.CW用なら、約500Hz上の、fc=443.5KHzです.
2点マーカーにしてΔf=fp-fsを読んでいます.Δf=15.45KHzありますから、SSB用フィルタに十分対応できます.CW用にはやや広いのですが、直列共振周波数fsの選別を厳密に行なえば何とか可能な筈です.但し、最初から通過帯域幅Bw=300Hzとか600Hzは狙わないほうが無難です.選別が困難になり、できたとしても通過帯域での損失が大きくなりすぎるので実用的でないでしょう.実例は続編で詳しく説明することになりますが、Bw=1KHzで設計すると、850Hz(-6dB)のフィルタになりました.これは振動子のQが低いことと、周波数のバラツキによる『通過帯域減少』があるからです.Bw=850Hzと言えば少し広めですが、混雑した7MHzでも十分な実用性を持ったCWフィルタでした.
セラミック振動子も水晶振動子の代替品として安価を武器に高い周波数への進出には著しいものがあります.写真は、HF帯のセラミック振動子です.手前に置いた455KHzの振動子は大きさの比較用です.上段に並んだ左から、2MHz、3.68MHz、4MHz、8MHzです.
これは2MHzのセラミック振動子の特性です.マーカーはΔfを示しており、116.4KHzもあります.2MHzの水晶がたったの2.31KHzしかなかったのを思い出して下さい.Δfが大きすぎてHF帯のセラミック振動子では狭い帯域幅のフィルタは困難なのです.もちろん、10KHz〜40KHzと言うような広い帯域幅のフィルタが必要なのでしたら活用できるでしょう.
これは3.68MHzのセラミック振動子の特性です.マーカーはΔfを示しており、219.5KHzもあります.だいたい周波数に比例してΔfも広がるようでした.
4MHzのセラミック振動子を並べてみました.この周波数はポピュラーらしく、ジャンクのほか頂物などで沢山の種類が集まりました.一番手前の円筒状の物も同じ用途のセラミック振動子です.表面実装しやすい形状に作ったものでしょう.メーカーも様々でしたが、用途が同じためか、どれも極端な差は見られません.
4MHzのセラミック振動子の例です.上記写真の上段右端にある青い色のものです.記号から村田製作所の物のようです.Δfは241.5KHzでした.
最後に、8MHzのセラミック振動子の特性です.8MHzの振動子は可変周波発振器としてQRP-Clubのトランシーバ『FUJIYAMA』に採用されたことがあります.Δfは500KHzもあって、可変周波発振器に向いた特性であったことがわかります.しかし、これだけ広いと周波数安定度の点では不利で、ドリフトが大きいというレポートがあったのもうなずけます.しかし、安易に作ったLC発振器よりも再現性は良かったはずです.
これは次回の予告です.CSB455Eを使って製作した『世羅多フィルタ』です.通過帯域幅850HzのCW用で、たったこれだけの物で、LCフィルタでは到底不可能な『切れ味』を実現できました.後編をご期待下さい。
■Part.1のまとめ
パート1では『世羅多フィルタ』の準備として、セラミック振動子の特性に着目してみました.セラミック振動子を使ったラダーフィルタを製作するための要点はつかめたと思います.水晶振動子が安価に出回っている状況では、性能で劣るフィルタの価値は高くないかもしれません.しかし、もとがラジオから出発したようなICを使う製作とか簡易な受信機の改造には役立ちます.うまくすればCRと同じような値段で良く切れるフィルタの素材が手に入るのですから見逃す手は有りません.どんな用途にはどういった特性(周波数)の振動子が必要なのか把握できれば、ジャンクを見る目も変わってくるはずです.では、続いてフィルタ製作編をご覧下さい.
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