Key words:Electret Microphone,ECM,Desktop Microphone,Homemade,Kenwood,SSB,Mic_Transformer
■このページの目的
簡単なエレクトレット(コンデンサ)マイクロフォンを作ってみました.なかなか気に入ってしまい、2つめも作ってしまいました.簡単な備忘録として再製作する時に役立つよう纏めます.
■マイクロフォン雑談
音圧を電気信号に変換するのがマイクロフォンです.既に廃れましたが、レコード再生のピックアップも機械的変移を電気信号に変換します.逆に電気信号を音響(音圧)に変換するのはスピーカーですが、これらの機械・電気変換部分こそファイファイの世界では違いの現れる部分であり、しかも最も難しい部分です.アンプや球を換えるより劇的に変化しますが、スピーカーにお金と努力を注ぐのはどうも人気がありません.Hi
アマチュア局のマイクといえば、カーボン型かクリスタル型と相場が決まっていた頃がありました.ヴェロシティ型やコンデンサ型もあったのですが、高価で扱い難いうえ、ラフに扱うとお釈迦の危険があったのです.マイクも進歩しましたが、高級マイクは今でも注意が必要です.安価で扱いが楽でも、音質が悪かったりノイズが多いのでは不満が出ます.わりあいラフに扱えて音質もよいダイナミック型に徐々に置き換わりました。しかし、構造的に量産に適さず、あまり安価にはなりませんでした.小型軽量化も困難でした.やがて登場したエレクトレット型に主役交代します。エレクトレット型は、コンデンサマイクの一種です.比較的歴史は浅く、入手が容易になったのは1970年代でした.コンデンサ・マイクの音質を受け継ぎながら、使い易くラフな扱いを可能にしたのが特徴です.電荷を保持するエレクトレットと言う高分子膜を使うことで、正真コンデンサ・マイクで必要だった高電圧が不要になります.また、出力を取り出すためには真空管のようにハイ・インピーダンスなデバイスが必要でしたが、同時期に実用化されたFETを使うことで解決しました.これらの組合せで実現したのがエレクトレット・(コンデンサ)・マイクロフォンです.現在では量産が進み非常に安価になりました.むしろ余りにも安価になったので軽んじられる傾向があります.しかし上手に使えば素晴らしい音質を楽しむことができます。価格対性能比で言えば間違いなくマイクロフォンのチャンピオンでしょう.
■エレクトレット・マイク
実は、あまり良い印象を持っていませんでした.どうも音の線が細くなるとか、ダイナミックレンジが狭いような印象がありました.音圧の高い打楽器などが特に苦手のようで、酷い目にあったことがあります.こうした音の収録ばかりでなく、無線の世界でも得意そうに使っていたローカル局の音質が芳しくなかったのが今でも印象的です.ただ、自作FMワイヤレスマイクに採用したところ、非常に良かったことがあり、使い方次第ではモノになるかも知れないと思っていました.ちょっと前に、フレキシブルパイプの付いたスタンドマイクをいただきました.ちょうどマイクも不足していた関係で、これを活かして(改造して)卓上用のマイクを作ってみました.ところが、どうもいただけません.モヤ付いた感じがあるうえ、なんとなく歪っぽいのです.素材はそんなに悪くない筈ですし、何しろ負荷抵抗と結合コンデンサしかないような簡単な回路です.なぜ良くないのか、その後しばらく悩むことになります.いろいろな揚げ句、思っていた常識が覆ったり、デバイス特性を再認識させられました.わかってしまえばナルホド納得なんですが.Hi これからご紹介するモノは、一見あたり前に見えますが、私の一つの結論です.ネットワッチでは貴方の結論は出ません.ぜひ実践で導き出して下さい.(なおチープな路線に徹していますので、ノイマンのマイクなど引き合いに出されませんようお願いします.それらは良くてアタリマエ.悪ければ・・・.Hi)
マズは完成したマイクの写真です.撮影の関係で、ウンドスクリーン(風防)がデフォルメされて巨大に見えますが、シャックではなかなか良い感じです.黄色のウインドスクリーンはちょっと何かナア・・と思ったのですが、案外オシャレな感じです.
ほとんど手持ちジャンクや100円ショップで調達した部材です.でもマズマズ満足な物ができました.
回路図です.マイクは回路が簡単ですから見ての通りのものです.
ECMカプセルの負荷抵抗は1.2KΩです.これはマイクトランスのインピーダンスに合わせる為です.ECMカプセルの出力端子はFETのドレインですから、自身の内部インピーダンスは十分高く、インピーダンスは負荷抵抗によってほぼ決まります.負荷抵抗の大きさにより出力電圧も変化しますが、数KΩから10KΩ程度で使うのが一般的なようです.T1はマイクトランスです.1.2KΩ対600Ωのトランスです.マイクトランスにはDC電流を流さないのが原則ですから、コンデンサC1で直流カットします.ECMカプセルの出力電圧は小さいので、電解コンデンサは不適当です.形状が大きいですが、フィルム系のコンデンサを使います.このコンデンサの値を変えると低域特性を加減できます.スイッチで切換えるのも面白いでしょう.ECMカプセルには電源が必要です.これは乾電池でも良いでしょう.しかし、ここではRigからもらうようにしました.最近の無線機のマイクコネクタにはDC電源が出ています.平滑され、安定化されている筈なのですが、思ったよりリプルが大きいようでした.最初ハムが出ました.ハムは音質云々以前の問題です.退治しなくてはお話になりません.磁気誘導やアースループを疑いましたが、そうではありませんでした.リグから出ているDC8Vにリプルがあり、C2が大きめだったのでリプル電流がかなり流れたようです.その結果、マイナスラインの配線抵抗を共通インピーダンスとするハムが出たようでした.リグ内部の電源はインピーダンスが低いらしく、リプル電流も大きくなったのでしょう.R2(=1KΩ)入れることで大きなリプル電流がアース回路に流れるのを防ぎました.これでマイクゲインを上げてもハム(100Hz)は聞こえなくなりました.
エレクトレット・マイクの心臓部、ECMカプセルです.左のものは特に小型の物です.ヘッドセットなどに使われるものでしょう.製作では右の物を使いました.カプセルの直径は14mm、ダイヤフラム径も10mm近くありそうです.
上記写真の右側カプセルの実測特性です.少々高域でダレていますが、無線では関係ない領域です.このECMカプセルはAE関係の計測器を検討した際にメーカーから実測特性図付きで貰ったサンプルだそうです.不要になった物を貰ってきました.大きなダイヤフラムとあって、一般のECMより感度が高いようです.また、低い周波数まで延びており、その成分をカットするのは必須事項です.うまく使えるようになったらた感じ良い音になりました.しかし使いこなすまではなかなかでした.
一般に売っているECMカプセルはどんな特性なのか気になっていました.合わせて調べてみました.図は松下製のWM034の代表特性です.最近10個180円で入手た超安価なECMカプセルです.しかし、なかなか優秀な特性です.もし音が悪いなら・・・使い方に問題アリなんでしょうか? 上手に使えばファイファイとしても通用しそうなくらいです.実験的に使ってみたのですが、僅差で上記の大きなモノを使うことにしました.
安いECMカプセルは感度、周波数特性、音色などにバラツキがあるそうです.ステレオ用には選別が必要なようです.でも、当たればとても良いとのことです.ご参考まで.
C1に使った2.1μFのフィルムコンデンサです.ジャンク基板から取りました.2.2μFでも良いのでしょう.高信頼の機器に使ってあった良いものです.このコンデンサの容量で低域特性を加減できますが、マイクトランスのインピーダンスとも関係するので一律に幾らが良いとは言いきれません.しかし、加減してみることが大切です.
使用したマイクトランスです.元々は有線通信機器に使ってあったハイブリッド・トランスでしょう.良いコア材を使っているらしく、素晴らしい周波数特性です.(下の写真)上記コンデンサと、このトランスを組合せて使うことがキーポイントでした.エレクトレット・マイクは、非常に低い周波数、例えば可聴域以下の空気振動や僅かな風の流れ、機器の唸りのようなものまで拾ってしまいます.むしろそうした周波数の成分の方が大きいくらいです.これを後ろのマイクアンプ回路に持ち込むと、アンプ回路で混変調歪みを作る原因になりえます.音がスッキリしない、何故か歪みっぽいと言う原因にはこうした非常に低い・・・サブソニック成分にあったようです.トランスはこうした超低域成分は通しませんからたいへん効果的です.これまでこうした無意味な低域信号をそのまま引き込んでいたのが問題だったようです.無闇に周波数特性が広すぎるのはマズイということです.なお、トランスなら何でも良いワケではありませんが、旧山水のSTシリーズでも無いよりマシでしょう.通信用ハイブリッド・トランスは、モデムなどに内蔵されていることがあります.ジャンクを探すと良いでしょう.写真には形状が異なる2種類が写っていますが、用途が同じなのでまったく同じ特性でした.
低周波用の小型トランスは信用していませんでした.山水のST-シリーズの蒲鉾型周波数特性が脳裏に焼き付いていたからです.もちろん、マイクロフォン・ミキサーに使うようなタムラ製作所の本格的トランスなら別です.しかし、大きいし、高価なので無線にまで使うのはちょっとやり過ぎかなと思っていました.たまたまジャンクの基板に載っていたトランスが気になったので試してみました.これが素晴らしい特性だったのでビックリしました.写真は左端が10Hz、右端が500KHzの対数目盛りです.黄色のトレースが振幅特性で、2dB/Divに拡大して見ています.緑色のトレースは位相特性です.なお、小型トランスは磁気飽和するので大きな信号は扱えません.せいぜい-10dBm程度ですが、マイクに使うならまず問題ありません.
無線機用マイクにPTTスイッチは必需品です.チョイ押し用プッシュスイッチとトグルスイッチを付けました.これはお好みですが、ラグチュー派にはホールドできるスイッチも必須です. 長く使いたいので良いスイッチをと思い、NKKの小信号用を使いました.
電気的な部品をざっと説明しましたので、メカ部品に移ります.これが使ったフレキシブル・パイプです.ちょっと細身ですが案外しっかりしています.先端にECMカプセルが付いていましたがハウジングは壊してしまい、パイプを主体に使います.元々のECMカプセルは使いませんでした.
どう見ても灰皿です.Hi これを台座に使います.100円ショップで見付けたステンレス製です.板厚は約0.5mmあってしっかりしています.重量も適当で、マイクがひっくり返る心配もありません.しかし、加工がたいへんでした.たった3つの穴開けに四苦八苦する始末です.
裏返して使う関係で、底面の状態が気になります.そこで金属磨きで磨いてみました.もっと入念にやれば鏡のようになりそうですが、適当なところで終了にしました.ずいぶんピカピカになったんですよ.Hi
実用にするにはウインドスクリーン(風防)が必須です.無線機では周囲の音を拾わぬように比較的近くで話します.このため息が直接ダイヤフラムに当たることがあります.そうなると非常におかしな感じの音になります.また、エレクトレット・マイクは少しの風でも感じるので風よけが不可欠です.本格的なマイク用を購入したいところですが、100円ショップで見付けたスポンジ・ボールを使ってみたところ十分効果的でした.音色も無線で使うなら殆ど変化がわかりません.これでもしっかり呼吸や風が当たるのを防いでくれます.もう少し地味な色合いが欲しいのですが、お子様用の玩具なので黄色と白の2色セットしか売っていませんでした.2個100円なので汚れて来たら使い捨てです.Hi
マイクロフォン先端部です.ECMカプセルの周囲に開いた小穴は周波数特性に影響があるので塞ぐのはNGです.熱収縮チューブでパイプに固定しておきました.
あまりお見せするようなものではありませんが、台座の中身です.ステンレスは少々ハンダ付けしにくいので銅テープを貼ってその上にアースをするようにしています.ゴムの板を貼付けて共振止めと振動伝達防止の足を兼ねてるようにしました.
灰皿ですのでタバコを置く窪みが縁の3箇所にありました.これを覆って見栄えを良くする意味で、コルクテープを巻いてみました.元を知らなければ灰皿だってわからなくなったと思うのですが・・・でも何かのフタを流用したようにも見えますね.Hi
ほぼ同じ回路で製作した新旧を並べました.右側は元から台座があったのでそこに回路を組込みました.左2台目は台座から製作を始めました.これで2台のリグに専用のマイクができました.
完成したマイクをさっそくFT-101ZDに接続してみました.FT-101ZDのマイクコネクタは4ピンが付いていましたが、8ピンに交換し、さらに内部のDC8Vを供給できるように改造しました.8ピンコネクタの接続方法には迷ったのですが、シャックの規格統一のためにKenwood/TRIO式で配線しました.なお、内部から電圧を取り出す時は万一の短絡時に事故が拡大しないように数10〜数100Ωを通すと安全です.SSBフィルタの特性などからマイク本来の性能は生かしきれないようですが、様子を見ながら改造・整備を行ないたいと思います.
ところで、記憶の良いお方は覚えているかもしれませんね.『あのコンデンサ・マイクはどうしたの?』って.写真がそれですが、少々問題があって整備中に破損してしまいました.どうにもならなそうで、修理をお願いすると作り直しになってしまうでしょう.ご迷惑を掛けてもと思いそのままになっています.なかなか良い感じだったので残念なのですが・・・.もしも何とかなったら改めてご紹介しましょう.
■エピローグ
マイクロフォンも凝り始めるとキリがありません.良いマイクも欲しいのですが、高価なら良いとは言えないのが難しいところです.自分に合わないと価値がありません.エレクトレット・マイクなら秋葉原や日本橋に出物がありますし、通販で入手も容易です.近所のパーツショップにも安価に売っていました.交換してみるとそれぞれ違いがあるようです.良いのもありますし、酷いのもあります.数万円、数10万円で地声に合わないと悲しいでしょう.しかし、安価ならダメでも苦になりません.マイク遊びに最適なのでジャンクのECMユニットを楽しんでいます.大きな声では言えませんが、色々試すと高価なアレより良のが見つかったりすることがあるんですよ.Hi Hi
さて、FT-101Zは改造したので、今度はFT-901,etcも改造しなくては・・・.
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