Key words:Q5'er,IFT,50KHz,T-50,TRIO,Mica_Cap,

What's the "Q5'er" ?

Do you remember the Q5'er ?, It was the sharp filter of '60s.
懐かしいQ5'erとは? TRIOのT-50型IFTの特性を探ります.

(Ver.1.0:Apr.2nd 2005+Ver.1.1:May.8th 2005+Ver.1.1a:May.27th 2005+Ver.1.1b:Oct. 11th 2006)

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written by Takahiro Kato JA9TTT/JH1WBU, Saitama JAPAN

http://ja9ttt.homedns.org/hamf/myexp/Q5er_today.html



このページの目的
いまではすっかり忘れ去られたQ5'erを取り上げます.その心臓部であった50KHzIFTの特性を振り返ります.さらに現代への活用を探ります.


Q5'er
Q5'erと書いて『キュー・ファイバー』と読みます.おそらく米James Millen社の商品名でしょう.J社は1940〜60年代に各種のHAM用部品、アダプタ、そして送受信機などを供給していました.Q5'erは受信機の選択度を向上させるためのアダプタです.当時の一般的な受信機は高一中二が多く、選択度は455KHzのIFTに頼っていました.選択度改善の手段にはSingle Crystal Filter、Q-Multi、そしてQ5'erがありました.Q5'erとは、受信機から引出した455KHzのIF信号を、数10KHzの低い中間周波に再変換して、LC回路の共振特性により高選択度を得ようとするアダプタです.LC共振回路の-3dB帯域幅(Bw)は共振回路のQで決まります.共振周波数をfとすればBw=f/Qです.コイルのQを100と仮定すれば、455KHzではBw=4.55KHzですが、50KHzならBw=0.5KHzになります.低い周波数に変換することでLC共振回路でも狭帯域が得られます.Q5'erの周波数は幾つでも良いのですが、一般には50KHz前後が選ばれました.


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Q5'er_01.GIF Q5'erの回路
455KHzを50KHzに変換するコンバータ部と、中心周波数50KHzの中間周波増幅回路でできています.5球スーパの検波回路までとそっくりです.但し、入力周波数は455KHz固定ですから局発を水晶発振にして安定度を向上する例もあります.検波したあとの低周波信号は親受信機に戻して増幅します.親機から引き出す455KHzは既に十分増幅されています.Q5'erはゲインを低く抑え、選択度のみを追及します.非常に高級なアダプタもありますが、多くは図のように簡単な回路で済ませていました.何のことはない単純な中間周波増幅器です.なお、多くの場合、BFOは受信機本体に内蔵されたものを使い、Q5'erには付けませんでした.Q5'erの用途はCWですからそれで十分でしょう.

Q5'erの部品
Q5'erは中間周波トランス(IFT)を除けば一般的な部品で構成されています.しかし選択度を決めるIFTは重要部品でした.初期の自作はQSTの記事が元になっており、それにならって戦後余剰品として放出された米軍受信機(BC-453/190〜550KHz/IF=85KHz)のIFTを使っていました.しかし、余剰品には限りがあるのでやがてコイルメーカーから専用のIFTが発売されました.これから紹介するのはTRIO製のQ5'er用IFTです.このIFTはT-50と言う名称で発売されたほかQ5'er製作用として周波数変換用の局発コイルと一緒にキットとしても販売されました.ほかにも松下電器産業から3本組の可変帯域型「2IF-W1」が発売されたほか、三田無線研究所(DELICA)製もあったようです.


T50_IFT_3trans.JPG TRIO T-50 Q5'er IFT
このT-50はJA6GZH山田OMに頂いた物です.T-50に3本組があったのかは定かではありませんが、初段用の-Aが2本と、検波段用の-Bが1本の3本です.より高選択度を得るために-Aを2本使い集中型IFTにしていたのか、あるいは2段増幅のQ5'erだったものと思われます.混信の多いバンドには一層の狭帯域が望まれたのでIFTを3本使った狭帯域化は効果があったでしょう.山田OMはVHFマンだったので狭帯域の必要は感じなかったとのこと、Q5'erは製作されなかったそうです.私はメカフィル世代ですからQ5'erは使いませんでした.


T50_Inside.JPG T-50の内部です.ハニカム巻きのコイルとマイカコンデンサが内蔵されています.マイカコンデンサは0.004μF±5%が使われています.従って、コイルのインダクタンスは約2.5mHです.ハイゲインを目的としないため、Low-L、High-Cのローインピーダンス型になっています.


T50A1_6dB_Plot.JPG T-50Aの周波数特性(その1)
初段用のT-50Aの特性です.綺麗な単峰特性になっています.-6dB帯域幅は約1.8KHzです.IFTは2個組ですからQ5'erトータルでの帯域幅はおおよそ1kHz程度になります.


T50A2_NG_Plot.JPG T-50Aの周波数特性(その2)
先のように-Aが2本あったのでもう一方の写真です.ところが、こちらは共振がブロードでした.内部を観察しても異常は認められませんが、Qが大幅に低下しています.


T50A2_NG_Mica.JPG 怪しい(?)マイカ・コンデンサ
コイルが劣化している可能性もありますが、使ってあるマイカコンデンサも怪しいものです.この形式のマイカコンデンサは耐湿性に劣っており、年月の経過で絶縁低下や容量変化するものが後を絶ちません.たとえ未使用新品でも長期保管されていたのなら疑ってかかるべきです.コイルの状態は悪くないので、まずはコンデンサを交換してみます.


T50A2_PSCap.JPG スチコンに交換
同調容量は、0.004μF(4000pF)です.ディップドマイカに適当な手持ちがなかったので3000pFと1000pFのスチコンで代替しました.これは3900pF(E12系列)のコンデンサでもよいでしょう.他のマイカコンも30年前の年代物ゆえ何時ダメになるかわかりません.この際に全て交換すべきかも知れません.μ同調式IFTの同調コンデンサは円筒型のチタコンかマイカコンが使われています.年数の経過でコンデンサの劣化も多いようです.未使用品であっても製造から年数が経過したIFTは特性確認してから使うべきです.Qの低下が見られればコイルを点検しコンデンサも交換しなくてはなりません.


T50A2_Plot.JPG T-50Aの周波数特性(その3:交換後の特性)
コンデンサの交換で正常な特性に戻りました.先に測定した-Aと同じ特性です.スチコンはマイカコン同様High-Qなコンデンサですからこうした用途に最適です.しかしQは高々100程度の共振回路ですから良質なセラコンでも良いかも知れません.但し必ずNP0(CHまたはCG)特性のセラコンにしてください.また、もとのようにマイカコンを使うなら必ずディップドマイカにしてください.


T50B_PlotJPG.jpg T-50B:検波段の特性
こちらは問題なさそうでした.測定は初段用と同じ方法なので、二極管検波回路が負荷になる実際の使用状態ではややブロードになるはずです.-Bも単峰特性です.Q5'er用のIFTは選択度最優先ですから検波段用と言っても疎結合に作っているようです.

注:測定はIFT単体で行なっています.Q5'erとしての総合特性は、2段または3段の特性になるため、各特性の傾斜は約2倍または約3倍となります.従って非常に急峻な特性が得られます.帯域外減衰も十分にとれます.


エピローグ
TRIO T-50型IFTの特性を実測しました.綺麗な単峰特性になっているのが印象的でした.理屈どおり狭い通過帯域が実現できるはずです.しかし、1960年代も半ばを過ぎると高性能なメカフィル、例えば国際電気のMF-455-05Kが比較的安価に供給されるようになっていました.受信機の付属装置としてQ5'erを解説する当時の記事を見ると、既に合理性を失った装置と位置付されています.比較的容易に製作可能とは言え、メカフィルの安直さと比べれば何れが合理的かは明白です.無線局の運用面から見ても当時の高一中二受信機を無闇に高選択度化しても使いにくさが際立ったはずです.高選択度は周波数の高安定とともにあるべきものです.安定度不十分な高一中二ではスタンバイするたびに相手局を見失うことしばしばだったでしょう.音声での交信ならいざ知らず、Q5'erが欲しいのは電信です.しかも使うのは混んだバンドですから一旦見失った相手を探すのは厄介だったでしょう.確かに選択度は改善されるが『非実用的』の烙印を押されたのもやむを得ません.そもそも第1局発可変のシングルスーパに付加すること自体に無理があるのです.付加する受信機側の周波数安定度を一桁上げなくてはその真価も見出せなかったに違いありません.

新世代Q5'erの提案
DS_02.GIF さて、過去に忘れ去られようとしているQ5'erですが、実用性は無いのでしょうか.昔と同じ高一中二に付加したのでは先人の苦労を追体験するだけです.さして意味はないでしょう.余分なミキサー回路の追加と言う愚をおかすことにもなります.しかし、私はもう一度見直しても良いのではないかと思っています.IFが455KHzのシングルスーパに付加するのではありません.良い特性のルーフィングフィルタを置けばHF帯からいきなり50KHzに変換してもイメージ混信の恐れはありません.そのような周波数構成も今では十分可能です.そして50KHzといった低いIFフィルタを使う方法はCWの受信フィーリングの決め手になるかも知れないと思い始めているのです.CW受信において絶対と言われた小林無線の受信機は75KHzのIFでした.LCフィルタで構成されたIFゆえに非常に良いフィーリングなのではないかと思えるふしがあるのです.ハイフレ・ルーフィングフィルタとT-50型IFTの組み合わせで小林に迫れる『可能性』が秘められています.後から付加する装置ではなく、LCフィルタを使う低IFを前提とした受信機を試作してはどうでしょう.忘れられようとしているQ5'er用IFTもこうして現代に活用の道を見出せるかもしれません.もちろん真空管で作っても良いですがヤッパリ半導体で行きましょう.


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End / おわり

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