Key words:Capacitance,C-Meter,Crystal Ladder Filter,Mica,Polystyrene,C-MOS 4583B,74HC00,LQT100KX,C-MOS OP-Amp,AN8005
■このページの目的
シンプルな容量計を作ってみました.簡単な回路で、まずまずの精度が得られたのでご紹介します.本編Part.1では回路と部品の説明を行ないます.Part.2:調整編、Part.3:液晶パネルメータ製作・改造編の3部構成です.
■ラダー型クリスタル・フィルタ
ラダー型フィルタの製作記事は興味を引いたらしく、たくさんアクセス頂いています.「設計には、たった3つのことを知るだけで良いので、簡単です」なんて書いてあるのですが、『そんなに簡単じゃないぞ・・・』と言う声が聞こえてきました.
この3つのうちの一つに、水晶の端子間容量Csの測定があります.フィルタの製作記事では『容量計で測定します』なんて気軽に書いてあるのです.ところが、この端子間容量は小さいものでは1pF程度、大きな物でも5pFと言う微小容量です.最近は安価なデジタルテスタにも容量計が付いています.しかし、分解能は1pFのものがほとんどです.もともと容量計測はオマケの機能ですし、そんな小さな容量の測定はほとんど考えていないのでしょう.これでは、『そんなに簡単じゃないぞ・・』と言う声にもうなずけます.そこで、小容量をうまく測定できる道具を自作することにました.
■製作する容量計(製作の目的)
数pFの微小容量を精度良く読み取れる容量計が目標です.最小分解能は0.1pFが欲しいところです.また、分解能はあっても安定していなくては使えません.最大測定容量はクリスタルの計測だけなら20pFもあれば十分ですが、それではあまりにも汎用性がないので、500pFまでにします.500pFまで測定できれば、同調用コンデンサ、大半のバリコンやトリマ・コンデンサの測定にも使えます.あまり測定範囲を欲張ると製作が難しくなります.簡単な物を心がけますが、せっかくの製作ですからなるべく実用性を高めるようにしました.
- 測定範囲:0〜500pF (読み取り有効数字は3桁を目標とする)
最小分解能:0.1pFまたは1pF (特に小容量では0.1pFの分解能)- 測定精度:1%以内 (直線性、再現性、温度係数など総合での精度)
- 特殊機能:測定ケーブルの容量キャンセルが可能なこと.
- 一般仕様:寸法はなるべく小型.電源は乾電池を使い長時間動作可能なこと.
- その他:特殊部品は使用せず、安価で一般的な部品を使用する.再現性の良い回路.
■製作結果は・・
写真は、以上の目的と仕様で製作した容量計です.測定再現性、精度、安定度ともに目標をクリアできました.電源は006P乾電池を使っています.消費電流は約2.8mAですから、電池寿命も十分確保できました.製作に要する費用は新品の部品を購入しても5,000円以内に収めることができました.(但し、好みで変わるケース代とオプションの液晶表示は含まない)
■回路の説明
デジタル表示部付きのスタンドアローンタイプは、図の回路に電圧計が付いただけのものです.表示器付きを製作するための電圧計部分についてはPart3で説明します.図の回路は、測定値を外部のデジタル電圧計で読み取るためのアダプタと言うことになります.表示器内蔵で作る場合も回路は共通です.図の回路をそのまま作ってください.CRの充放電時間を計測する方式です.時間計測は、ワンショット・マルチのIC、4538Bを使っています.Rを固定し、未知容量を接続したときのパルス時間を電圧変換して計測しています.ケーブル容量の打ち消しは、打ち消し用パルスを作り、差し引く方法で実現しました.容量電圧変換回路の出力は10mV/pFになるようにしました.2Vフルスケールの電圧計で200pFまで計測可能です.回路設計上、最大出力電圧は約5Vに制限されます。テスタの20Vレンジを使い500pFまで測定できます.但し、多少余裕がとってあり、電池が9V近くあれば550pF以上の測定ができます.電池の終止電圧は7Vとして設計しています.なお、詳細な計測原理や各部の動作については機会があれば改めてご紹介することにします.( Feb.19th 2005:SCM-Ver.1a/GIF)
●主要部品表
部品表を作っておきました.部品集めにご利用下さい.
計測器はそれらしい動作をすれば良いという物ではありません.ラジオなどは良く聞こえさえすればOKなのですが、計測器は違います.精度、安定度、再現性がないと使い物になりません.記載された以外の代替品でも動作するかも知れませんが、うまく調整が出来なかったり、精度が出ないなどのトラブルが発生するかも知れません.回路動作を理解した代替なら結構ですが、「何となく使えそう」と言うのはおやめ下さい.想定外の代替品使用では、もしトラブったとき、お問い合わせ頂いてもサポートしようがありません.勝手な代用の揚げ句、『あいつの回路は動かない』と言いふらされても困ります.Hi Hi
参考:2.2MΩの抵抗(R8)は、金属皮膜型の入手が難しいと言う報告がありました.その場合は、(1)金属皮膜型の1MΩ(1%)を2個または3個直列にして使う、(2)3.3MΩ(5%で可)のカーボン抵抗を使うなどの方法があります.この抵抗はクリチカルではないので、どの方法でも大丈夫です.(VY-TNX ! JE1RYH)
■使用部品の注意
使用部品のうち、重要なものについて説明します.
●半導体関係
ワンショット・マルチ 4538B
スタンダードC-MOSの「4538B」を使ってください.74HC4538は不適当です. TC4538B、CD4538B、MC14538Bなどの型番で各社から出ています.100円くらい.・・・4538Bのデータシート:(160KB)
Quad-NANDゲート 74HC00
ここには、必ず高速C-MOSの74HCタイプを使ってください.TTLの7400や74LS00、或いはSTD-CMOSの4011Bは性能保障できないので使ってはダメです.100円以下で買えます.・・・74HC00のデータシート:(340KB)
Dual-C-MOS OP-Amp TLC27M2
2回路入りC-MOS構造のOP-Ampです.入力インピーダンスが高い必要があるので、一般的な2回路入りOP-Amp、358や4558は不適当です.また、TL072などのBi-FETタイプも電源電圧、出力電圧範囲、消費電流などの関係で適当ではありません.TLC27M2(テキサス・インスツルメンツ)の同等品は、各社から出ており、LMC662(ナショナル・セミコンダクタ)、NJU7022(新日本無線)などが同等に使えます.いずれも安価で、200円以下で買えます.・・・TLC27M2のデータシート:(876KB)
Clock OSC LQT-100KX
12.5KHzのクロックを発生します.クロックの安定度は直接計測精度に影響するため、水晶発振を基準にしています.LQT-100KXは5Vの電源を与えるだけで100KHz、50KHz、25KHz、12.5KHzの出力が得られる水晶発振器です.しかし生産中止品なので探すのは難しいかもしれません.入手可能なら500円程度のはずです.12.5KHzのクロックが得られれば良いので、水晶発振器と分周器を使って代替品が作れます.代替回路の製作方法については次項で説明します.・・・LQT-100KXの納入仕様書:(2,100KB)←巨大なので注意!
●LQT-100KX代替の回路について
12.5KHzでC-MOSレベル(5V)のクロックがあれば良いので方法はいろいろ考えられます.周波数の絶対精度よりも、むしろ安定していることが重要です.しかし100ppm程度の変動は許容できるのでセラミック振動子(セラロック)を使うこともできます.回路全体の消費電流を抑えるためには低い周波数を発振させるのがコツです.400KHzのセラロックとC-MOS分周器、4060を使う方法は安価でお奨めできます.そのほか、12.8MHzのTCXOを使う方法もあって、非常に高精度が得られます.消費電流はかなり多くなるでしょう.他に、ICの数は増えますが、1〜2MHzを水晶発振させ、4518B、4520Bなどのカウンタを使って分周するのも良さそうです.400KHzのセラロックと74HC4060で作ると300円くらいでできます.・・・74HC4060のデータシート:(84KB)・・・74HC4040のデータシート:(48KB)
3端子レギュレータAN8005
出力電圧5Vの低ドロップアウト型3端子レギュレータです.使用したものは松下電器産業製ですが、他社にも同等品があります.低ドロップアウト型と言うのが重要です.本回路の場合、AN8005を使えば乾電池が約6.5Vになるまで正常に動作します.ごく普通のマンガン型積層乾電池:BL-006P型(100円ショップで2個100円のもの)を使っても連続100時間以上使えます.一方、78L05型を使うと、電池が約8.5Vより下がるともう正常に動作しません.また、78L05は自身の消費電流が大きいのも欠点です.無負荷でも自身が5mAくらい消費します.電池の負荷電流が約3倍にもなってしまいます.以上二つの理由で、78L05を使うと電池寿命が短すぎて実用的ではないでしょう.代替品を使う場合も低ドロップアウト型で、自身の消費電流も小さいものを選んでください.低消費電流の計測器は電池式にしてコードレスにするのが便利です.AN8005などの新型3端子レギュレータは電池式の機器にはとても有効です.なお、出力電圧の安定性も精度に影響するので重要です.AN8005は普通の部品ですが、精度を維持できる程度の安定度は得られます.このAN8005はJA7HNV秋篠様に頂いたものを使いました.ありがとうございました..・・・AN8005のデータシート:(164KB)
代替品:同等に使えるものとして、TA78DS05BP(東芝)が入手容易なようです.100円程度です.・・・TA78DS05BPのデータシート:(292KB)
ダイオード
3本のダイオードを使っています.1S1588はワンショット・マルチの保護用です.なくても動作しますが、外部に引き出される端子ですから、静電気等から保護するために必ず入れておいて下さい.発光ダイオード(LED)はパイロット・ランプとして通電確認の意味のほか、回路動作上必要なマイナス電圧を作る役目を兼ねています.流れる電流が少ないので、高輝度型が適当ですが、普通の物でも使用できます.赤色、黄色、緑色のLEDならどれでも良いと思いますが、青色、白色のLEDは順方向電圧が高過ぎるので使えません.3mA流したときの順方向電圧が1.5〜2.0Vの物を使ってください.(赤、黄、緑ならどれでも良いはず)
■CR部品
コンデンサ
C1、C2(150pF)にはマイカ(注)あるいはスチロールなど温度特性が良好で、絶縁の良いコンデンサを使います.C3(0.1μF)は、フィルム・コンデンサがお奨めですが、リーク電流の少ない良質のタンタル・コンデンサも使えます.そのほかはバイパス・コンデンサがほとんどですから、精度、温度特性など特に問題になりません.一般的なものが使えます.
注:写真のマイカ・コンデンサは、「ディップド・マイカ」という形のものです.「シルバード・マイカ」と呼ばれる場合もあります.「ディップド」とは、外観表面の仕上げ形式を言います.また「シルバード」とは、内部の電極構造を示す呼び名です.しかし、現在では「シルバード(銀蒸着電極)」でない構造のマイカはむしろ特殊ですし、小容量の一般品の外観仕上げは液体樹脂(エポキシ系)に浸して引き上げる(デイップする)形式が殆どですから、どちらも同じものをさしているといえます.OMさんにはお馴染のキャラメル色のマイカ・コンデンサ(鋳込みマイカと言う形式)もまだ見かけます.しかし、かなり古い在庫品の可能性が高く、この形のマイカは耐湿性の劣ったものです.後でトラブルのタネになるので、マイカ・コンデンサといえば「ディップド・マイカ」を選びましょう.もちろんキャラメル型と同等以上の性能を持った上位互換品ですから安心して使えます.
固定抵抗、可変抵抗
抵抗は金属皮膜型をお奨めします.カーボン型でも動作はしますが、長期的な安定性、温度係数の点から好ましくないでしょう.計測器ですから校正した状態がある程度の期間維持できないと役立ちません.金属皮膜抵抗は少し高価ですが使用本数も少ないので大した出費ではありません.同様に、半固定抵抗も良い物を使ってください.安定性のみならず調整のしやすさにも影響します.密閉型で、性能も安定しているCOPALのRJ-6Pなどがお奨めできます.調整しやすいように可変範囲を狭くしていますので、多回転型を使う必要はありません.パネルに取り付けるケーブル容量キャンセル用の可変抵抗器(VR1)は使用の都度調整するので、耐久性のある物を使うと安心できます.
参考:2.2MΩの抵抗(R8)は、金属皮膜型の入手が難しいと言う報告がありました.その場合は、(1)金属皮膜型の1MΩ(1%)を2個または3個直列にして使う、(2)3.3MΩ(5%で可)のカーボン抵抗を使うなどの方法があります.この抵抗はクリチカルではないので、どの方法でも大丈夫です.(VY-TNX ! JE1RYH)
■配線・組立
扱う周波数は12.5KHzなので、部品レイアウトはシビアではありません.しかし、なるべく信号の流れにそった無理のない部品レイアウトにしてください.写真に試作品のレイアウトを示します.サンハヤトのICB-93Sと言う蛇の目基板に組立てましたが、部品は少ないのでゆったり作っても十分入り切れるはずです.表示器内蔵のスタンドアローン型を製作される方は、抵抗分圧器と-5V電源を載せるためのスペースを空けておくと良いでしょう.基板面積の1/3くらい残せば十分です.容量電圧変換回路は2/3に十分載ります.基板から配線を引き出す部分には端子を設け、また回路図のTP(テストポイント)の電圧をチェックしやすいようにしておいてください.言うまでもありませんが、ハンダ付けは確実に行ないます.ハンダ不良(イモハンダ)があると、接触不良になって不安定で使い物にならない測定器が出来上がります.
スタンドアローン型の内部
上記の基板と表示用の液晶パネルメータと共に組込んだスタンドアローン型の内部です. 液晶パネルメータを200mV、2V、20Vの3レンジ切換式にするための抵抗分圧器が組込んであります.そのほか、乾電池を共有するための回路などが追加されています.液晶パネルメータの製作と組込用改造については、Part3でご紹介しています.
■簡単な使い方
本体のテスト端子で
本体の表示器下部にあるテスト用ソケット(端子)に直接コンデンサを挿入して測定しています.使用したICソケットは、テスト用のもので、接点バネのストロークが長く、挿入が容易でヘタリが来ないものです.メーカーは山一電機ですが、少量入手は難しいかもしれません.だいぶ前に秋葉原のパーツショップ(T-Zone?)で購入した物です.耐久性のある端子なら何でも結構です.
測定ケーブルで延長して
どうしても実現したかった機能がこれです.測定用同軸ケーブルの先にある容量を測定できます.測定ケーブル分の配線容量はパネルのツマミを回してゼロにキャンセルできます.バリコンなど、ソケットに取付けにくいものを測定する時にはとても便利な機能です.既存機器に実装された容量も、ホット側の一端を外せばたいていそのまま測定できます.なお、ADJ-Zero(VR1)の可変範囲との関係で、ケーブルで延長できる長さは20〜30cmまでです.ケーブルで延長して常用したい場合には、もう少し長いケーブルにも回路の小変更で対応できます.方法はご相談下さい.安定な測定をするためには、なるべく短いケーブルが好ましいです.(追記:Feb.27th 2005)
■Part 1:製作編のエピローグ
シンプルな容量計は如何だったでしょうか.実は、以前ほぼ同じ形式の容量計を検討したことがありました.但し、測定範囲はずっと広く、μFの範囲までカバーするものでした.問題になったのは各レンジの精度を均一に保つことにありました.様々な調整箇所を設けて、補正などを行なえばそれなりの物は可能であるとの結論を得たのですが、結局作りませんでした.あまりスマートではない測定器になりそうだったからです.他の計測手段を持っていたので、何が何でも作らなくてはならない状況にはかなったからでもありました.小容量に特化することは活用範囲が狭い物になります.誰でも広い測定範囲を持ったユニバーサルな計測器を欲するものです.しかし、製作は容易なことではありません.むしろ用途を絞り、特化することで精度を上げ、尚且つ製作も調整も容易になると言うメリットを本機の製作から改めて認識した次第です.製作編に従い、完成したら調整編で計測器の『魂』を入れます.
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