温度補償用コンデンサ
http://ja9ttt.homedns.org/parts/cap_tempco.html
By Takahiro Kato
Ver.1.0 May 12th 2005+ Ver.1.1 May 19th 2005

LC回路の温度特性
コイルLとコンデンサCを使った自励発振器は、自由に周波数を変化できるので便利である.しかし、Lと Cの温度による変化がそのまま周波数の変動になる.コイルは単に銅線を巻いたものであったり、ボビン(巻枠)に細線を巻いた単純な構造である.従って温度変化は銅線や巻枠の熱膨張が主である.巻径が大きくなればインダクタンスが増加すると言う、プラス(正)の温度係数を持っている.コイルの温度係数を小さくする(温度変化を小さくする)には、巻枠を使ったコイルなら、温度による熱膨張の小さいステアタイトが良く、VFOコイルなど温度安定度が要求される場合に使っている.既に珍し部品となったが、エアダック・スコイルは材質・構造的に空芯コイルとしては温度特性が良かったと言われている.コイルには、磁気コア(磁芯)を挿入してインダクタンスを稼いだり、Qを高くする場合も多いが、その場合は主に磁気コアの温度特性が現れ、空芯コイルより一桁くらい特性が悪くなるようだ.もちろん、温度特性に注意して作られたコアもある.コンデンサの場合、エアバリコンのように誘電体が空気の場合、極板や枠が熱膨張することによる正の温度係数を持っていると考えられる.熱膨張が特に少ないインバー(鉄ニッケル合金)を極板に使い、シャフトにステアタイトを使ったバリコンさえ存在した.固定コンデンサは使っている誘電体に依存し、単純な熱膨張として容量変化を考えることはできない.マイカ(雲母)コンデンサは、やや正の係数を持ち、ポリスチレン・フィルム・コンデンサ(スチコン)はやや負の温度係数を持っている.このように、PLLやDDSが未発達の時代の周波数安定度は、部品の温度特性に左右された.高周波数安定な自励発振回路の実現は回路技術のみならず、部品、素材、構造に及ぶ広範な技術を要したのである.現在ではPLLなどの技術が発展したため、周波数安定度は容易に向上可能である.しかし、PLL回路に用いるVCO(電圧可変周波発振器)の温度安定度が悪いとPLLシステムとしての性能が悪くなるので、あまりラフな設計は良くない.VCOの安定度が良ければ、可変範囲を狭めることが可能になり、C/Nが良くなると言った効果がある.温度補償の技術はこれからも必要である.

温度補償コンデンサ
LC発振回路のみでなく、水晶発振回路も温度係数を持っており、何らかの温度補償をしないと実現できる周波数安定度には限界がある.変化の原因は真空管やトランジスタの特性変化もあるが、 上記のようにコイル(L)やコンデンサ(C)の変化が大きく影響する.周波数の安定のためには温度係数の(温度変化の)小さな部品を使い、さらに温度による真空管やトランジスタの特性変化が影響しにくい回路を工夫する.クラップやバッカーと呼ばれる発振回路が回路的な工夫の成果である.しかし、それでも温度係数をゼロにすることは不可能である.部品の選定、回路の吟味を行なって可能な限り温度変化を少なくしたら、あとは温度に対して逆の特性変化をする部品を使って『補償』することになる.
温度補償用コンデンサは、そうした用途のために作られたものであり、一般にはセラミックコンデンサが多い.アマチュア的に温度補償を行なうのは設備の点で難しいものがあるが、根気よく行なえば不可能ではない.あまり馴染みの無い部品かもしれないので規格化されているコンデンサの温度特性について、読み方を纏めておく.

  コンデンサの温度係数表示一覧表
記号
数値表示
温度係数
色表示

C
NP0(エヌ・ピー・ゼロ)
0ppm/℃


H
N030
-30ppm/℃


L
N080
-80ppm/℃


P
N150
-150ppm/℃


R
N220
-220ppm/℃


S
N330
-330ppm/℃


T
N470
-470ppm/℃


U
N750
-750ppm/℃








温度係数の誤差表示
上記の温度係数にも誤差があり、以下の誤差とともに表示されている.

  誤差表示一覧表
記号
温度係数誤差

G
±30ppm/℃

H
±60ppm/℃

J
±120ppm/℃

K
±250ppm/℃

L
±500ppm/℃

M
±1000ppm/℃


表示例:
CH特性(頭が●黒)のコンデンサの温度係数は・・・・・0±60ppm/℃
UJ特性(頭が●紫)のコンデンサの温度係数は・・・・・-750±120ppm/℃  となる.

温度係数がもっともゼロに近いことが保証されたコンデンサと言えば、一般にはCG特性(0±30ppm/℃)と言うことになる.なお、CG特性はC0G(シー・ゼロ・ジー)と呼ばれることもある.温度係数は現品には文字で示される場合もあるが、頭の部分にペイントで色表示されている場合が多い.

表示のないコンデンサ
温度特性についてまったく表示のないセラミック・コンデンサは注意を要する.特にバイパスコンデンサ用に作られた小型で高容量のものは、『高誘電率系』セラミック・コンデンサと呼ばれ、温度係数が非常に大きい.温度係数も直線的でない.温度変化が気になる用途にセラミックコンデンサを使うなら、『温度補償系』セラミック・コンデンサを使い、上記のCGCH特性の物を選ぶ.CGまたはCH特性のセラミック・コンデンサは頭部に黒くペイントしてあるので容易に判別できる.あるいは、温度係数が小さいことがわかっている種類のコンデンサ・・・例えばマイカ・コンデンサやスチロールコンデンサを使うのも良い.

温度補償用コンデンサの積極的な使い方
共振回路を構成するコイル(L)及びコンデンサ(C)の温度係数は一般に正(プラス)であるため、温度補償用コンデンサは負(マイナス)係数の種類がそろっている.(プラスのものもあるが)同調回路を構成する場合、大半の同調容量はなるべく温度係数ゼロのコンデンサを使い、その上で補償用コンデンサの容量と温度係数を考えて共振周波数が変動しないように温度補償する.
しかし、言うのは簡単だが実際にはなかなか難しいものがある.回路素子の全てが電源のオンとともに同一に温度変化するわけではなく、機器内部の温度分布、部品の熱容量など様々の温度による変化が関係する.従って、補償前に温度特性を求めたうえで、計算から補償用コンデンサの容量と特性を決め、さらに実測から効果を見て加減すると言う繰返しになる.しかし、電子部品には製造してから暫くは温度変化とはあまり関係のない自然に変動する要素もあり、また組立配線時のストレスの開放などがあるのでそれらの影響が複雑にからんでくる.そのため、実際の温度補償は、十分な通電エージングを行ない、組立初期変動やストレスの解放が済んでから行なう必要がある.温度上下するサイクルを繰り返すと良いと言われるが、アマチュア的には困難であろう.あるメーカー製受信機のVFOは組立て後に約1年ものエージングを行なってから使っていたそうだ.組立ててすぐに温度補償を行なって素晴らし周波数安定度を得ようと期待するのは少々安直に過ぎるのかもしれない.しかし、完全な温度補償は難しくとも、少しでも温度変化を減らすと言った効果が期待できる場合も多いので、難しく考えずにチャレンジしてみるのも良いと思う.温度補償コンデンサも全種類揃えておく必要はなく、数pF〜数10pFの範囲で、各P、S、U特性のものを幾つか用意しておけば実験には十分である.

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